2021年 はじめての家づくりガイド
予算決めからスケジュールまで一挙公開!

Step1 お金のこと、どうする?
住宅ローンは圧倒的な低金利が続き、家の購入を考えている人には有利な状況です。しかし新型コロナウイルスの影響で、さまざまな不安を抱えている人も多いのでは? そんな今こそ知っておきたい家づくりのお金に関するポイントを、sumicaアドバイザーの昆知宏さんにうかがいました。
- sumicaアドバイザー
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新潟住まいのお金相談室/昆 知宏さん
住宅専門のファイナンシャルプランナー(FP)。住宅会社に勤務していたが「売り手ではなく、第三者の立場から住宅購入に関わりたい」と考え独立。年間100組以上に住宅購入のアドバイスを行う。TV出演、講演実績など多数。
新型コロナウイルスで家づくりを諦める必要はありません!
社会や経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。仕事や収入が不安定になったことで「こんな時にローンを組んで大丈夫かな」「このまま賃貸の方がいいのでは?」と悩んでいる人もいるかもしれません。しかしライフプランをシミュレーションしてみると、賃貸にかかる固定費を払い続けるよりも、家を所有した方がお金の面で最終的に有利、という結果が出る人が多いのです。もちろん家を買う時の年齢や収入にもよりますが、目安としては「合計借入額を3,000万円以下」にすることがポイントです。
子育て期間と重なることが多い30~50代の人生の充実期に、自分のお気に入りの住まいで生活することは、心に大きな豊かさをもたらしてくれるはず。新型コロナウイルスで家づくりを諦めたり先延ばしにしたりする前に、この機会にじっくりとライフプランを立ててみてはいかがでしょうか。住宅ローン減税やすまい給付金など、家づくりをサポートする支援策も多数あります。詳しくは以下で解説します。
住宅購入は無理のない予算設定が大事です
政府の支援策などで住宅購入者には「超追い風」の状況ですが、やはり基本中の基本は、無理のない予算設定をすることです。
家を建てようと思ったら、きっと多くの人が真っ先に「あの家がすてき!」「こんな暮らしがしたい」とイメージするでしょう。それは当然のこと。でも、理想の家にかかる費用と、準備できるお金は 一 致しないことがほとんどです。理想の家に妥協ができなくなると、そもそも全体の額が大きいことも手伝って、2,000万円を借りるのも2,500万円を借りるのも大差がないように感じてしまいやすいので要注意。さらに住宅購入後は毎月のローン返済の他にも固定資産税や火災保険料、光熱費も発生します。将来的に子どもの学費が足りなくなって奨学金を借り、子どもに負担を背負わせてしまう…という可能性もあるのです。(図1・2)。
マイホームは無理のない返済額であってこそ、家族に幸せを運んでくれます。今の収入と支出をしっかり整理し、月々のローン返済額プラス2万円程度でも「月々」と「年間」の収支がマイナスにならない。それが無理のない予算設定の目安です。面倒でも 一度お金のことを真剣に考えておけば、先々の後悔をなくすことができるでしょう。

わが家の予算を「見える化」しよう
「家づくりは無理のない予算設定が大事」という先ほどのお話を受け、ここでは架空の家族“すみか家”をモデルに予算をシミュレーション。空欄にはあなたの家計の数字を書き込んで、目安となる予算を出してみましょう。

すみか家のプロフィール
30代の夫婦と未就学児1人の3人家族。夫は正社員、妻は契約社員の共働き。

- 1夫・妻の年収、世帯年収を記入。手取りは年収×0.8が目安。
- 2月々の返済可能額を出す。今支払っている家賃は参考になるが、今後かかってくる子どもの学費、車の買い替えなどを考慮して無理のない額に。この額にプラス2万円程度で計算しても、「月々」と「年間」の収支がマイナスにならないように。
- 32×12カ月で年間返済可能額を出す。この額は手取りの20~25%以下が理想。すみか家は(年間返済可能額)108万円÷(手取り)640万円=18%程度で、条件をクリアしている。
- 42で出した「月々の返済可能額」を下の「ローン借入額一覧表」※に当てはめ、ローン借入額の目安を出す。すみか家は毎月9万円返済、返済期間35年を想定している。
- 5自己資金や実家からの援助がある場合は足す。
- 6手順4、5で出した数字の合計が総予算となる。
※「ローン借入額一覧表」

今知っておきたい家づくりをバックアップ! 必ず押さえたい3つの支援策
- 10年間の住宅ローン減税で節税!
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住宅購入を後押しする代表的な支援策、住宅ローン減税。10年間にわたり所得税が控除されるもので、新築だけでなく、リフォーム・リノベーションでも受けられる大変有利な制度。忘れずにチェックしよう。
- すまい給付金が最大50万円もらえる!
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すまい給費金とは、簡単に言えば、家を建てた人の収入に応じてお金がもらえる制度。その対象者と金額は次の表の通り。最大50万円と金額も大きい。ただし新潟市を含む政令指定都市とそれ以外は計算式が異なる。また、住まい給付金をもらうには2021(令和3)年12月末までに引き渡しを受け、入居する必要があるので注意しよう。
- 資金援助の非課税枠を活用しよう!
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家を建てるにあたり、実家から援助を受ける人も多いだろう。このとき、両親や祖父母など直系尊属からの資金援助は、最大1,500万円まで税金がかからない。なお、義理の両親・祖父母からもらう場合は、配偶者名義の持ち分(妻の両親からもらう場合は妻名義の持ち分)を設ける必要がある。いずれにしても多額の資金援助が見込める人にはうれしいニュースだ。ただこちらも期限があり、対象となるには2021(令和3)年3月31日までに契約をする必要がある。2021(令和3)年4月1日~同年12月31日に契約した場合は、非課税枠が1,200万円にダウンするので知っておこう。
今知っておきたい住宅購入資金のキホン
- 油断しがちな「諸費用」、その目安は?
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家づくりのお金は工事費や土地の価格に目がいきがちだが、「諸費用」と呼ばれるお金も大きい。物件にもよるが目安は建築総額の5~8%とされ、4,000万円なら200~320万円となる。「ここでいう『諸費用』とは、土地、登記、融資、火災保険などにかかる諸費用を指します。引っ越し費用や家具・家電の費用は含まれないので、別に準備してくださいね」(昆さん)。金融機関によっては住宅ローンに諸費用分が含まれなかったり、諸費用に使えても金利が跳ね上がったりすることもあるので、しっかり確認しよう。
諸費用の一例
- 変動金利? 固定金利?
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住宅ローンを利用するにあたって最初に考えるのは、変動金利にするか、固定金利にするかだろう。それぞれに適した家計の特徴を以下にまとめた。
しかし昆さんによると、「本当は変動金利が合っている人ほど固定金利を選び(お金に余裕がある人は慎重派が多い)、固定金利が合っている人ほど変動金利を選ぶ(お金に余裕がないと金利の低下を期待する)傾向があります」とのこと。自分たちの家計を冷静に分析して判断したい。
Step2 家づくりのスケジュールを知ろう
気になる「お金を払うタイミング」も解説!
ポイントは、例えば子どもが保育園に上がるタイミングなど「いつまでに新生活をスタートしたいか」を設定し、そこから予定を逆算すること。スケジュールには余裕を持ち、どのくらい工期がかかるか、どのタイミングで支払いが生じるかなどもビルダーによく確認しましょう。
1. 資金計画・ビルダー探しスケジュールの目安入居の9~12カ月前

家づくりにかけられる総予算を把握する。自分たちの希望や条件に合ったビルダーも探そう。
2. 土地探しまたは現地調査

立地や環境など土地の条件をビルダーに伝えて探してもらう。自分で探してもOK。すでに土地がある場合はビルダーに現地調査をしてもらう。
3. 住宅見学

完成見学会や構造見学会に積極的に出かけ、実際の住まいを見てみよう。
4. 要望出し・プラン提示

間取りや理想のライフスタイルなど、家づくりの要望をビルダーに伝える。ビルダーはファーストプランと金額を提示。
5. ローン事前審査提出
具体的な資金計画ができたら金融機関に融資を申し込み、建築総予算を確定する。
6. 基本契約・土地契約支払発生

CHECK!
ここで「土地手付金」(相場は土地代の10%程度)、「設計契約金」など初期費用の支払いが発生する場合がある
打ち合わせを重ね、プランや金額に納得したら基本契約を交わす。土地の売買契約も行う。
7. 内装・外装・設備打ち合わせスケジュールの目安入居の9~10カ月前

キッチン、バス、トイレなどの設備やインテリア、外観のイメージを相談。実物やサンプルを見ながらメーカーや仕様のあたりをつける。
8. 間取り確定
最終的な間取りを決め、使用する建築材料の詳細が書き込まれた「実施設計図」を作成。
9. 色・デザイン確定

内装、外装、設備のメーカーや色、デザインを決めていく。
10. 最終仕様決定

これまでの打ち合わせ内容に基づき、図面、仕様、金額を確定する。施主、ビルダー担当者、現場監督など家づくりに関わる人々で共有する。
11. 正式請負契約スケジュールの目安入居の5~8カ月前

工事に着手するための請負契約を交わす。
12. ローン本申し込み※
事前申し込みから変更がないか、予算内かなどを十分確認し、ローンの正式申し込みを行う。
※ローン本申し込みのタイミングは、金融機関により異なる場合があります
13. 土地決済支払発生

CHECK!
住宅ローンを最初に使う時「土地の仲介手数料」や「土地の登記費用」「ローンの手数料」など諸費用の大部分を支払う
ローン手続き完了後、土地の全額に加えて仲介手数料や登記費用、ローン手数料などの諸費用を支払う。支払い後、土地が自分のものになり、住宅ローンが全額実行される。または短期間のローン「つなぎ融資」などを利用する。
※土地を買わない人は、着工時に諸費用を支払うことが多い
14. 確認申請提出
関係官庁に申請書類を提出し、建築許可を取得する。
15. 地鎮祭・着工支払発生

CHECK!
ビルダーに支払うお金は、着工時・工事の中間・工事完了後の3回に分けて支払うのが一般的。ビルダーによって異なるので確認しよう
地鎮祭を執り行い、工事の安全を祈願する。家の配置や基礎の高さなどを現地で確認する。ここでビルダーに着工金を支払う。
16. 上棟式スケジュールの目安入居の4~5カ月前支払発生

基礎工事が終わり、柱や梁などの骨組みを組み上げる。施主も立ち会って確認する。
17. 仕上げ工事

クロスや水回り設備などの仕上げ工事を行う。この後「建物表題登記申請」や、新住所への変更手続きを行う。
18. 竣工支払発生
工事完了後ハウスクリーニングし、竣工となる。残金を清算する。火災保険や地震保険の申し込みを行う。保険商品の比較検討はあらかじめしておく。
19. 竣工検査

引き渡し前に、施主、担当者、工事責任者などが立ち会い、竣工検査を行う。
20. 引き渡し

夢がいっぱい詰まったマイホームがついに完成。引っ越し作業をして新生活をスタートしよう!
21. 新生活スタート!支払発生

CHECK!
引っ越し、家具・家電購入費用を支払う
すまい給付金やローン減税は、施主自身による申請が基本。うっかり忘れないように!